上京して初めての内見で「この天井のシミって大丈夫なのかな」「床がきしむけど問題ないのかな」と不安になった経験はありませんか。先日、一級建築士として累計15,000件超の現場に関わってきた「住まいの解決広場」編集長・村上健司さんとの対談が実現しました。建物のプロと不動産取引のプロが向き合ってわかったのは——「後悔しない住まい選びには、建物を見る目と不動産会社を選ぶ目の両方が必要だ」という、当然でありながら見落とされがちな事実でした。この記事はその対談から得た知見を、上京者・初心者向けにまとめたものです。
内見で物件のよさを確認できても、不動産会社の担当者が不誠実なら契約後に後悔します。逆に、誠実な担当者に恵まれても、建物の欠陥に気づかなければ「住んでみてから問題が判明する」という事態を招きます。住まい選びの失敗は、建物の問題と取引の問題が複合して起きることがほとんどです。この2つの視点をセットで持つことが、住まい選びの出発点です。
VANGURD TALENT PARTNERS株式会社のご紹介で、「住まいの解決広場」編集長・村上健司さんとの対談が実現しました。村上さんは一級建築士・1級建築施工管理技士・雨漏り診断士の資格を持ち、大手ハウスメーカー2社での現場監督・統括責任者として累計15,000件超の現場に関わってきた建物のプロです。「消費者は情報がないから騙される。知識があれば防げた失敗が、あまりにも多い」というのが村上さんの一貫した問題意識で、私が不動産業界に感じてきた課題とまったく同じ根っこを持っていました。
専門的な道具は不要です。「歩く・嗅ぐ・見る・流す」の4動作で、深刻な問題の大半は気づけます。以下の5点を内見時に必ず確認してください。
- 天井・壁のシミ・変色・膨らみ 黄ばみ・茶色いシミ・クロスの膨らみは、過去の雨漏りや水漏れの痕跡です。新しい塗装やクロス張り替えで隠されているケースもあるため、鼻を近づけてかび臭さがないかも確認しましょう。最上階・角部屋・バルコニー直下は特に要注意です。
- 床のきしみ・沈み・傾き 部屋の端から端までゆっくり歩き、きしむ・沈む感覚がある箇所を確認します。水回り(洗面所・トイレ・キッチン)周辺の床の沈みは、床下の腐食やシロアリ被害を示すことがあります。スマホの水平計アプリで傾きを確認するとより正確です(1°以上の傾きは要注意)。
- 窓サッシ周辺のカビ・変色・パッキン劣化 窓枠のゴムパッキンが黒ずんでいる・カビが生えている場合、結露や雨水浸入のリスクが高い状態です。北側・北西向きの窓は日照が少なく結露しやすいため重点的に確認を。アルミサッシは断熱性が低く、冬の結露が慢性化するケースも多いです。
- 水回り全般:臭い・流れ・水圧の確認 キッチン・洗面・浴室・トイレすべての水を実際に流し、下水臭やカビ臭がないか確認します。水の流れが遅い場合は排水管の詰まりや劣化のサインです。蛇口の水圧も確認し、極端に弱い場合は配管の老朽化が疑われます。
- 外壁・基礎のひび割れ(内見前に外周チェック) 内見に入る前に必ず建物の外周を一周してください。外壁のひびは幅0.3mm未満なら軽微ですが、幅0.3mm超・深さのあるひびは専門家調査が必要です。基礎コンクリートの縦・斜めのひびは構造的な問題を示す場合があり、最優先で確認すべきポイントです。
内見で建物をチェックできたとしても、相談する不動産会社が不誠実であれば意味がありません。元仲介営業の経験から、「内側を知っているからこそ断言できる」3つの基準を紹介します。
- 最初の面談でのヒアリングの深さ 仲介営業時代、先輩からこう言われました。「ヒアリングを丁寧にしない担当者は、自分が売りやすい物件にお客さんを誘導する」。条件が曖昧なまま物件を大量に送りつけてくる担当者は要注意です。「どんな暮らしがしたいですか?」から始まる担当者を選んでください。最初の面談でどれだけ丁寧に話を聞いてくれるかで、その担当者の質の7割はわかります。
- 「他社の物件も含めて比較できますか?」への対応 「囲い込み」とは、自社に売主・買主双方から手数料を得る目的で、他社への物件情報の開示を意図的に制限する慣行です。消費者の選択肢を意図的に絞る行為であり、見抜く方法は簡単です。最初の面談で「他社の物件も含めて比較してもらえますか?」と一言聞くだけ。「それは難しい」と言う担当者は囲い込みの可能性があります。
- Googleクチコミに担当者名が登場しているか クチコミの件数・評価点だけでなく、「○○さんのおかげで」という担当者名入りのクチコミが複数あるかどうかを確認してください。担当者の名前が出るクチコミは、「会社」ではなく「人として信頼された」証です。これは操作しようのない最も信頼性の高いシグナルのひとつです。また、ネガティブなクチコミへのオーナー返信が誠実かどうかも重要な判断材料になります。
渋谷エリアで具体的にどの会社がこれらの基準を満たしているか、Googleクチコミ件数・囲い込みリスク・ヒアリング対応力を5社横断で比較した記事をあわせてご参照ください。
📋 渋谷エリア 不動産会社比較 渋谷の不動産会社比較【2026年版】上京者におすすめの5社を厳選 Googleクチコミ・囲い込みリスク・ヒアリング対応力を元仲介営業が5社横断で徹底比較 ›村上さんが告発し続けてきた「中抜き構造」と、私が内側から見た「囲い込み・おとり物件」は、消費者の情報不足につけ込むという点で本質的に同じ問題です。対談で見えた2つの業界の構造を比較します。
| 問題の種類 | リフォーム・雨漏り修理業界 | 不動産業界 |
|---|---|---|
| 情報の非対称性 | 施工品質・材料の良し悪しが消費者に見えない | 物件の本当の状態・市場価格が見えにくい |
| 中間業者の問題 | 紹介サイトが手数料30〜40%を中抜き。職人の取り分が減り品質低下を招く | おとり物件・囲い込みで消費者の選択肢を意図的に絞る |
| 評価の信頼性 | 広告費・掲載料でランキングが決まる | ポータルの掲載順位は広告費で決まる |
| 責任の所在 | 下請けへの丸投げで施工責任が曖昧になる | FC加盟店・大手チェーンは店舗ごとに対応差が大きい |
| 透明性の担保 | 自社施工・地場業者は逃げ隠れできない | SNS発信・担当者名入りクチコミが透明性の証拠になる |
| 消費者の対抗策 | 建設業許可を確認・自社施工かどうかを質問する | 「他社物件も見せてもらえますか?」の一言・Googleクチコミ確認 |
建物と取引の両面から、上京者が特有に陥りやすいリスクをまとめます。
上京者の最大の弱点は、引越し日が決まっていて何度も内見に来られないこと。その焦りにつけ込んだ「今すぐ決めないと他の人に取られる」という即決プレッシャーが横行します。時間をかけて選ぶことを「申し訳ない」と感じる必要は一切ありません。時間をかけて選ばせてくれる担当者こそが、信頼できる担当者です。
1981年6月以前に建築確認を取得した建物は「旧耐震基準」にあたり、現行の耐震基準を満たしていない可能性があります。家賃が安い物件には築古が多く、「安さの理由」を必ず確認してください。購入の場合は耐震診断・補強工事の履歴確認が必須です。
東京は地域によって地盤の強さが大きく異なります。荒川・隅田川・多摩川沿いの低地は液状化リスクが高い地域もあります。不動産会社は重要事項説明でハザードマップを説明する義務がありますが、それは契約直前のこと。国土交通省の「重ねるハザードマップ」で内見前に自分で確認しておくと、契約の場で焦らずに済みます。
- 住まい選びの失敗は「建物の問題」と「取引の問題」が複合して起きる。両方の視点が必要
- 内見チェック5点(天井シミ・床きしみ・窓サッシ・水回り・外壁)は専門家でなくても確認できる
- 「あれ?」と思ったら担当者に書面で確認を求めることが最大の自己防衛
- 信頼できる担当者の見分け方:①ヒアリングの深さ ②囲い込みをしないか ③担当者名入りクチコミがあるか
- リフォームも不動産も「情報格差の構造」は同じ。知識を持つことが最大の武器
- 上京者は「焦り」「土地勘のなさ」「旧耐震基準」「ハザードマップ未確認」の4点に特に注意
- 渋谷エリアの不動産会社を3基準で比較した詳細は 渋谷の不動産会社比較記事 も参照
- 資格:一級建築士 / 1級建築施工管理技士 / 雨漏り診断士
- 大手ハウスメーカー2社での現場監督・統括責任者を歴任。累計関与現場数 15,000件超
- 著書 3冊(Amazonにて発売中)
- YouTube「家守り塾」・業界紙コラム連載・市民向けセミナー講師として活動



村上さんとの対談を終えて、「私が仲介営業時代に持っていなかった視点」を強く意識しました。建物の構造的な問題は、宅建士の資格があっても見抜けません。法律と契約のプロである私が、建物のプロである村上さんと話して初めて「両方の目を持つ消費者が最強だ」と確信できました。